これは遊戯王アドベントカレンダー2023の3日目の記事です。
次の投稿者は「【両-エ17】Rapid Bout カードデザイナーさんによる「深淵ヴァレットだけじゃない!ドラゴンリンクの魅力を徹底解説!」です。
目次
要約
- コンマイ語は過去の遺物
- 現代の遊戯王は読みやすい文体で直感的に理解しやすい
- 一方でテキスト欄はTCGの中でも小さい部類であり、平文ゆえの冗長性と合わせて見づらい
- OCGのルールは整備されているようだが、それは大量の裁定によるものであり根本的な問題が逆に見えづらくなっている
コンマイ語
皆さんはコンマイ語という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
twitterにおいて数か月ごとにトレンド入りするたび、遊戯王プレイヤーは反論材料を持ち寄って闇鍋パーティをしている様子が見えますね。たぶん本人たちは新勧パーティのつもりなのでしょう。
なお私はこの手の話題が嫌いです。なぜなら、遊戯王を批判する側よりもむしろ擁護する側による無礼な行為が散見して不快感が強いからです。
こんな古臭い単語を引き合いにしてでないと遊戯王を語れないとか、ちょっと恥ずかしいんですよ。
そんなコンマイ語ですが、ようするに遊戯王のテキストやルールを揶揄するネットスラングの一種です。その起源は定かではありませんが、ずっと昔の遊戯王を知っている人からすればまあわかると思います。
とうわけで、遊戯王のテキストはどうなっているのかちょっと見てみましょう。
コンマイ語は時代遅れか
そもそも、初期の遊戯王OCGはそれはそれは稚拙なゲームだったようです。まずルールが未整備であり、同時にテキストが体系化されておらず、極端にわかりづらかったとのこと。
有名な例として
- 公式ルールにない造語を使うケースがある
- 対象をとる、取らないの判別が難しい
- コストと効果の違いが判らない
- 特殊召喚を無効にしたのに無効にできないといわれた
- タイミングを逃すってなんだよ
などなど
個人的にこれらは既にある程度解消しており、従来のコンマイ語は言葉だけが残った張りぼてのような存在だと思っています。
典型例は「氷結界の龍 トリシューラ」でしょう。もはや解説する必要もないくらいに有名ですが、デュエルターミナルで出た直後のテキストはこんな感じでした。
このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手の手札・フィールド上・墓地のカードをそれぞれ1枚までゲームから除外することができる
最初のトリシューラが出たのは2010年。遊戯王歴でいうと第6期にあたります。
このテキストを読んだ当時の人の間で、発動時に対象をとるのかどうかで大いに揉めました。対象にとるかどうかでその後の対応が全く異なるからです。
カードゲームあるあるですね。
しかし今のテキストはこんな感じです。
このカードがS召喚した時に発動できる。相手の手札・フィールド・墓地のカードをそれぞれ1枚まで除外できる(手札からはランダムに選ぶ)。
発動時には何も対象にしておらず、手札はランダムであることも明記されており大変わかりやすいですね。
このように遊戯王のテキストは現在のところ、発動とその効果が明確に区分されるようになっており、対象をとるかどうかの判別が容易になっています。
また、細かい部分のアップデートもされており、例えばフォントの大きさやテキスト枠の背景なども読みやすく沢山の記述ができるように改良が施されています。
もちろん全ての遊戯王がこうなっているわけではなく、再録やエラッタが事実上難しい「光と闇の竜」なんかは古いテキストのままですが、マスターデュエルなどでは効果が明確になっていたりします。
これ以外にも遊戯王のテキストは初期のころとは比べ物にならないほどわかりやすくなっており、テキストがルールに則って丁寧に作られるようになっています。
さらに、公式データベースは他のカードゲームを圧倒するほどの情報量と密度を誇りますし、わからないことは公式を読めばほぼ一目瞭然といった感じです。
天下の遊戯王wikiが事実上の敗北宣言?
遊戯王といえば遊戯王wikiという非公式のwikiサイトがあまりにも有名です。
ここは遊戯王の最新情報や様々な裁定・デッキ構築案・使い方、はてはカードの由来や雑学という攻略サイトを超えた日本でもトップレベルの情報サイトです。
しかし、そんな遊戯王wikiのとあるページが更新され、ちょっと話題です(自分の中だけで)
遊戯王カードデータベースによって公式の裁定が改善される一方、この遊戯王Wikiは時代遅れになりつつある。
ルール効果や誓約効果などの非公式な概念を用いたルールの理解は誤った解釈の温床である。
古い裁定や間違った解釈が放置されることも少なくない。
不正確な知識が正しい知識の定着を邪魔することもあるので、ルールの勉強はKONAMIや集英社の発行する情報から学ぶようにしたい。
https://yugioh-wiki.net/index.php?%BA%DB%C4%EA
ようするに、事実上の遊戯王wiki敗北宣言とでもいうべき記述ですね。
そもそもが遊戯王公式が明白なルールを示していないことで有志が作り上げたものを起源としていますが、流石に古い情報が残りすぎており、負の遺産が重くのしかかっているということでしょう。
こういうレガシーコードはwiki全体に巣くっており、取り除くのはほぼ無理ですからね。
逆にいえばそれほどコナミの公式データベースや関連書籍の方が優れていると考えているのでしょう。
とはいっても別にルールやテキストが優れているわけではない
ここまで遊戯王をべた褒めしてきました。
遊戯王を好きな人にはだいぶキラキラした内容だったかもしれません。
けどこれだけでは単なるコナミへの信心を増やすだけのヨイショですよね。
一企業の商品をこんな形で祭り上げても全然面白くないです。
それに本質を見誤っていると個人的に感じます。
カードゲームのテキストはゲームUIである
UIとはUserInterface。つまりプレイヤーが見て触る部分のことです。
カードゲームは紙を基本としているため、原則カードとそこに書いてあるものだけでプレイすることを基本とします。ボードゲームのようにカード以外の要素、例えばカタンでいうと素材や島といったもの、は必須ではありません。デュエマなどが典型ですがデッキさえあれば公園でもプレイできるというのがカードゲームの面白いところです。
仮にゲームのUIが酷いとどうなるでしょうか?ゲーム性そのものを損なうとして低評価もやむなしだと思います
遊戯王のテキストは滅茶苦茶読みづらい
さてそんなカードゲームのテキストを少し考えてみましょう。
これを読んでいる人は童心に帰り、遊戯王を始めて触った時の感覚でみてください。
一般的にカードの配置は「カード名」「コスト」「イラスト」「効果テキスト」「パワー」「属性」といった感じですね。殆どのゲームではイラストの下に効果テキストがあると思います。
遊戯王とマジックを比較するとこんな感じです。
当然ですが遊戯王は元々マジックを模倣したゲームですから、似通っているのは当然ですね。
では皆さんは、遊戯王を最初に見たときにまず何を確認するでしょうか?
属性?攻撃力?イラスト?カード名?
まあ基本的には効果の部分でしょう。
ではこの効果テキスト、遠目にどう映りますか?
とても文字が細かくて読みづらいと思いませんか?
それもそのはず、遊戯王のテキスト枠は他のカードゲームに比較して小さめになっています。
カードそのものも他よりわずかに小さいため、長いテキストはどうしても窮屈で見づらくなっているのです。
これってゲームのUIとしてはだいぶ良くないと思いませんか?
効果がわかりづらい以前に読むことが大変ってのは致命的です。もちろんカード名と効果を暗記していればよいのですが、そもそも初心者にとって遊戯王のテキストって他のモノと比べて小さいんですよね。
マジックと比較すると、テキスト枠の高さはおよそ1.5倍もの開きがあります。
さらに遊戯王はこの狭いテキスト枠の中に種族や攻守が書かれているわけで、実質カード面積の4分の1程度しか使えていないことになります。
もちろん初期のころからすればずっと広くなりました。
しかし、マジック以外のTCGと比較してもその差は歴然です。
テキストが長くて意味がわからないと揶揄される遊戯王ですが、自分としてはどう考えてもテキスト枠やフォントの大きさなどの問題の方が深刻です。
デュエリストの友達がいないのでわかりませんが、恐らく紙の遊戯王を引退する人の中にはカードテキストが読めなくなった人もいるのではないでしょうか?
キーワード能力が不在
これも遊戯王黎明期からずっといわれているキーワード能力関連です。
わかりやすいのは、「守備表示モンスターを攻撃したら~」という俗にいう貫通効果が長ったらしいという問題です。
こういう効果がなぜ一文にまとめられないのか、と長年多くのデュエリストが発信していました。
結果、OCGではなくラッシュデュエルの中でそれは実現しています。
遊戯王はOCGの中では相変わらず効果自体を平文で書くスタイルに一貫しているわけです。
こういうルールとして意味がある用語をTCG全体では「キーワード能力(処理)」と呼称することが多いですね。これにより一々長いテキストを読まずとも意味が理解できるため、モダンなTCGの多くが採用しています。
マジックで有名なキーワード能力に「飛行」や「速攻」があげられます。こういうのは書いてあるとおりの動きをしますし、そもそも使う頻度が多いため特に問題はないでしょう。飛行という能力が空中を飛び、地上のクリーチャーを素通りできるというのは直感的に理解できます。
とはいってもこれ自体に問題がないわけではなく、その用語から効果を連想できないケースにはどうしようもありません。
例えばマジックにおいて、攻撃時に他のクリーチャーを強化する「喊声(きょうせい)」があります。この能力自体はシンプルである一方で登場する頻度がほぼなく(落葉樹)、似たような能力が多数存在するなんとも微妙な能力です。
キーワードだけでは判別がつないので結局はかっこの中身を読むこととなり、これ自体にキーワード能力が当てはまっている必要性はあまりないと個人的に感じます。
また、そもそもキーワード能力を遊戯王が設定したとしても、ルールブックに記載する以外にもテキストにその注釈があるはずです。これについては後述。
ようするに、頻出する効果をキーワード化したとしても、扱う側にとってはあまり意味がないのだと思います。これがラッシュデュエルのように完全新規で始めるゲームならそれが通じると思いますが、OCGでそれをする理由は皆無といっていいでしょう。
起動効果や誘発効果のアイコン化
これもよく聞く話です。
遊戯王のテキストは比較的鮮明になり短い文章で内容を伝えることがようになった一方で必要性があるのか不明なテキストもあります。
例えば「賜炎の咎姫」の②の効果は自分メインフェイズに発動できるという条件があります。これはこの効果がメインフェイズにしか発動できない起動効果であるための措置であり、誘発即時効果とも違うことが理解できます。しかし初心者にとっては冗長な書き方でしかなく、「起動」というアイコンをつければ一発で分かる話ではありますね。。
遊戯王の平文テキストのメリット・デメリット
遊戯王のテキストは平文、つまり略称やアイコンを用いずそのまま書いてあるものを処理するというスタイルです。単純に日本語がそのまま書かれているのです。
逆に現代のTCGはその限りではなく、キーワード能力やアイコン等を用いつつTCGっぽいあの独特な言い回りを使います。
遊戯王のような平文のデメリットは明確で、テキストが冗長すぎる点でしょう。
そもそも遊戯王のテキスト欄は小さく、そこにぎっしりと効果をしきつめているので読みづらい。
また、効果をひとまとめにすればカード同士の優劣の比較がとてもスムーズです。
貫通効果や破壊体制や対象にならない効果をキーワード化すれば、同じような効果を持つカード同士を並べて一目でどう違うのかが理解しやすい。
初心者が何をしているのかよくわからないという理由の一つが、そもそもその効果が何をしているのさっぱりという点にあります。
一方で平文のメリットは、ルールを熟読しなくとも書いてある内容に沿えばある程度遊べる点です。
キーワード化していれば視認性が上がる一方で、カードゲームとしての独自用法が際限なく増える危険性もあります。
多くの初心者が初めてTCGを触れたときに感じるのは「この用語は何を意味しているのか」というものです。例えば私のようなヴァンガード初心者にとって、超越という単語を見てもその意味を即座に判別はできませんでした。ゲームが多様化している現代では、似たようなキーワードや独特の用語を覚えるだけでも大変苦労することでしょう。
遊戯王の場合、発動・特殊召喚・対象などごくごく単純な専門用語があるだけです。
それ以外は日常でも使えるような平易な文体なので、基本読めばわかると思います。
日本語であることの根本的なデメリット
これはTCG全体が抱える問題ではありますが、そもそも同じ日本語であるにもかかわらずゲームによってその使い方や意味がまるで異なるのです。
有名な例として、遊戯王では起動効果は自身のメインフェイズにしか発動できないのですが、マジックの起動型能力は遊戯王でいう誘発即時効果と同等です。
墓地に送る、捨てる、破壊する、死亡するというシンプルな日本語であってもそれは変わりません。
例えば遊戯王では「このモンスターが破壊されたとき」という効果を持っている場合、スキドレで効果を無効にされていても墓地で発動するため問題なく効果は適用します。
一方でマジックでは「死亡したとき」は墓地に置かれた状態で誘発を判断するのではなく、戦場の状態を過去にさかのぼって参照するというルールです。よって、戦場で能力を失っている場合は死亡して墓地に行っても効果は誘発しません。
遊戯王がコンマイ語問題よりTCG全体のテキスト量増大やルールの複雑性が問題かもしれない
遊戯王のルールが難しいかどうかといえば、イエスでもありノーでもあります。見方によってだいぶ異なるからです。
私のようにマジックとの比較をするかなり珍しい人からすれば、遊戯王のルールは大変独特でTCGの定石を外している完全オリジナルなモノに見えます。特に無効化に関しては不可解であり、レガシーなルールを覆い隠すためにそれっぽく体裁を整えているという印象です。
遊戯王プレイヤーは何の疑問も持たず処理をしていますが、私からすれば疑問符が尽きない奇妙なルールで満載です。総合ルールもなく大量の裁定だけでやりくりをしている軌跡のゲームに映ります。
一方で遊戯王が好きな人からすれば、大量のドキュメントと見れば平易なテキストによって単純明快で知的なゲームに感じることでしょう。
それは別にどちらでもよいと思います。
ただ個人的にはTCG全体が複雑化しすぎ、多様化を加速しているため、もはや遊戯王だけの問題ではないよなとは思っています。
コンマイ語は過去のものだが未だに根深い理由は
現在のTCG業界ではコンマイ語は死語に近いですが、それはやはり遊戯王の一見して面倒くさそうなルールにあると思います。
そもそもTCGはシステム上どうしてもカードに記載されている内容だけでは遊べません。細かいルールやカード同士の相互作用をカードの盤面だけで読み解くのは不可能です。
そのため総合ルールというものが不可欠なのですが、遊戯王は総合ルールを原則用いずカードテキストといくつかの書籍、そして大量の裁定によって成り立っています。
これはあまたあるTCGの中でも特に異彩を放っていると考えていいでしょう。良い面も悪い面も。
それでも日本語だから問題ないかと触っても、やはり初心者には何をどうしてどうなっているのかわからない部分が非常に多い。
これはどうしようもないこととはいえ、歴史的な経緯を合わさればコンマイ語が浮上してくることは
それほど不自然ではありません。
また、こういう単語に多くの遊戯王プレイヤーが反応してたたき合いをするため、そういうお祭りを楽しみたい人が使うとも言えます。
どっちみちコンマイ語の話題が扱える範疇は遊戯王の10年前であり、他のTCGからしたらあまりに古すぎる規格について話しているなど、ちょっと時代錯誤的ですよね。煽る側もそれに反応する側も見ているものが違いすぎるし、どれも時代にあっていない。
遊戯王プレイヤーは他のTCGのルールにも触れてほしい
最後に、遊戯王プレイヤー、特に解説を担う人はぜひ他のTCGを触れることをお勧めします。
それこそ遊べる程度でもいいですが、できれば総合ルールを読むと世界観が広がると思います。
遊戯王のルールそのものにもなってとても有用です。
そうすればコンマイ語なんてものがどうでもよいことに思えるかもしれませんね。
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